三菱UFJ株価徹底予測|元投資銀行員が語る短期・中期・長期の投資戦略

2025-01-05 10:06:51 配信 693 回の読書

私自身、長年にわたって投資銀行のリサーチ部門や証券分析の業務に携わってきた経験から、(株)三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)は日本の代表的なメガバンクとして常に注目される銘柄だと考えています。今回、近6か月の株価推移を踏まえ、MUFGの現状と今後の見通しを私なりの視点で整理し、短期・中期・長期の3つの観点から展望を述べてみたいと思います。


1. どのような投資家がMUFGに注目するか

まず、どのような投資家層がこの銘柄を注目しているのかを考えてみます。MUFGは国内最大手の銀行グループであり、銀行業に加えて証券・信託・リースなど幅広い金融サービスを提供しています。そのため、日本株市場のなかでも安定性を重視する投資家、配当利回りをある程度確保したい投資家、あるいは日本の景気動向や金融政策の影響を受けやすい「銀行株」に着目している投資家などから特に関心を集めています。 銀行株は、基本的に国内外の金利政策に敏感で、景気回復に伴う貸し出し拡大や金融市場での取引量増加が株価にプラス要因として働きやすい特性があります。逆に言えば、世界的な景気後退懸念や、日本国内の低金利政策(あるいは日銀の金融緩和修正)などによって上下するリスクも内包しています。私の感覚としては、グローバル金利引き上げ局面のなかで、日本の銀行株には「円安メリット」や「海外部門の利益増」を狙った資金が流れやすい傾向がある一方で、国内市場が伸び悩めば株価が停滞する要因にもなり得ます。このあたりを鑑みると、MUFGの株を保有し続ける投資家は、比較的堅調な配当利回りやメガバンクとしての安定性、そして今後の日銀の動向に対する期待感を背景に、保有を継続する傾向が強いと考えられます。


2. 日本の銀行業の現状

次に、日本の銀行業界全般の現状を簡単に見てみましょう。日銀は長年にわたって超低金利政策を継続し、市場金利の上昇を抑制してきました。しかし、世界的には米連邦準備制度(FRB)の利上げや、欧州中央銀行(ECB)の金融政策正常化などが進み、金利差を背景とした為替市場の変動が大きくなっています。特に2023年から2024年にかけては、FRBが段階的に政策金利を引き上げたことで、円安ドル高が進行しました。日銀もここにきて「イールドカーブ・コントロール(YCC)の修正」など、金利政策に若干の変化を示しつつあります。 こうした状況下で、銀行業界は「貸し出し金利の上昇余地」や「海外業務の拡大」に期待が寄せられています。たとえば大手行の海外部門は、海外金利の上昇局面では利ざやが拡大しやすく、収益増が見込まれます。その意味では、国内の需要停滞リスクを海外展開でカバーできるメガバンクであるMUFGは、比較的有利なポジションにいると言えます。一方で、世界景気が減速すると、海外貸出先の不良債権リスクが増加する可能性もあるため、楽観視だけはできません。さらに国内では、長期的に見れば人口減少や企業の資金需要の低下など、構造的な課題も残っています。


3. 過去6か月の株価推移から見るポイント

チャートを振り返ると、2024年の秋口にかけてMUFGの株価は上昇基調をたどっており、一時的には1,950円台をうかがう水準にまで到達しました。その背景には、以下のような要因があると私は見ています。

  1. 海外部門の好調米国の金利上昇を受けて、米ドルでの融資業務や証券業務からの収益が拡大しやすい環境となりました。MUFGは米国においてユニオンバンクを持っていましたが、一部売却を行う一方、グローバル展開は引き続き積極的に進めています。アジアでもMUFGはタイやインドネシアなどで資本提携を進めており、今後の成長にも寄与し得ると考えられます。

  2. 国内景気の持ち直し期待2023年末から2024年頭にかけては、コロナ禍以降の景気回復が期待されており、政府の経済対策やインバウンド需要の回復などで企業活動の活性化が見込まれました。これにより、銀行業の貸し出し需要増が少しずつ期待されました。

  3. 配当利回り・株主還元施策への注目MUFGは安定した配当と自己株買いなどの株主還元策を打ち出しています。こうした施策は特に機関投資家だけでなく、個人投資家にも一定の人気を保ちやすい要因になっています。配当利回りを狙う投資家にとっても魅力のある銘柄として位置づけられてきました。

一方、12月以降は米国景気後退懸念が再び強まったことや、日銀の政策修正のペースが予想より遅いことなどが市場の不透明感を高めました。その結果、株価は1,850円前後でやや横ばい状態になることが多くなり、過去6か月で見ると少し上昇幅が鈍化している印象を受けます。


4. 短期(~数か月程度)の見通し

短期的には、米国の金融政策動向および日銀の追加的な政策修正の有無、さらに世界経済の景気後退リスクが大きなカギを握ると思います。具体的には、もし米国で利上げ停止・利下げへの転換が明確化すれば、ドル金利の魅力が低下し、円高方向に振れやすくなります。その結果、MUFGの海外部門の収益拡大期待は一時的にやや後退する可能性があります。 さらに、国内の企業貸し出し需要が予想以上に伸びないようであれば、銀行業全体の貸出金利マージン拡大が期待倒れに終わるおそれもあります。加えて日銀が市場金利を急激に引き上げるとも考えにくく、こうした環境では短期的な株価上昇には一定の限界があります。よって、私の経験上、短期トレーダーとしては今の水準(1,800円台)で積極的に買い向かうよりも、市場が混乱した際の押し目で仕込む、あるいは上下の値幅を狙って短期的に売買を繰り返す、といった戦略が現実的かもしれません。短期保有を検討するのであれば、利確・損切りラインを明確に設定しておくことが重要だと考えます。


5. 中期(半年~1年程度)の見通し

中期的な視点では、日本の金融政策における「緩やかな正常化」が進み、日銀がイールドカーブ・コントロールの上限を段階的に引き上げる展開が続く場合、銀行の金利マージン拡大が見込まれる可能性があります。貸し出し金利の上昇余地は、長年の超低金利環境下において銀行の収益を圧迫してきた構造的な問題でもあるため、多少でも金利が上振れするだけで利益貢献度はそれなりに大きいと思われます。 また、MUFGは海外事業にも力を入れており、為替面で円安が継続する場合には海外事業からの収益が円換算ベースで増える可能性があります。仮に米国や欧州などで一時的な景気減速があっても、長期的には新興国での金融ビジネス需要は拡大する見通しが強く、そこにMUFGが的確に投資していく限り、一定の成長余地はあると考えます。 このように中期的には、配当利回りと海外事業拡大の両面での恩恵を受けるとの期待感から、株価は底堅い動きを維持しやすいと私は見ています。ただし、実際に海外の景気後退が深刻化し、不良債権比率が増加した場合や、地政学的リスクが高まった場合は、銀行株全体が下落圧力にさらされる可能性も否定できません。中期的に保有する場合は、そのようなマクロリスクに対するフォローや、決算情報のチェックなど、丁寧なメンテナンスが必要になるでしょう。


6. 長期(1年以上)の見通し

長期的には、やはりMUFGの「総合金融グループ」としての強みや、世界経済の成長トレンド、そして国内でのデジタル化推進への対応力がポイントになると考えています。私自身、メガバンクはFinTech(フィンテック)領域での競合が激化するなかで、どのように既存の顧客基盤を活かしながら新規事業を生み出し、コスト削減やサービス向上を実現していくかが重要だと思っています。 MUFGはブロックチェーンやデジタル通貨の開発、またスタートアップ企業への投資など、従来の銀行業務から新たな収益源を確保しようと試みています。日本国内の経済成長が今後鈍化していくことを踏まえれば、海外投資や合併・買収(M&A)を通じてグローバルでの事業基盤を拡充し、リスク分散を図ることは十分に合理的な戦略です。 ただし、長期投資の観点では、人口減少社会や高齢化の進展による国内マーケットの縮小、あるいは日銀の金融政策が正常化した後の反動リスクなど、課題も多く残っています。また、近年は地政学リスクや自然災害リスクなど、銀行にとって不確実性の要因が増大しています。したがって、MUFGがこうしたリスクをうまくコントロールしながらグローバルなビジネスを安定成長させられるかどうかが、長期投資家にとって最大の注目ポイントになると思います。


7. 私の投資判断とまとめ

私が総合的に見た場合、MUFGは以下の理由で引き続き魅力的な投資対象の一つと感じています。

  1. 安定的な配当と大手銀行としての信用力バランスシートが比較的強固であり、配当政策も安定しているため、長期保有でインカムゲインを得たい投資家にとって有望。

  2. 海外事業展開による成長余地米国やアジアへの展開は、国内の需要縮小を補う意味でも重要。海外金利上昇による利ざや拡大、M&Aや投資による事業拡充が期待される。

  3. 政策転換による金利上昇の恩恵日銀が緩やかに金利を引き上げる局面では、貸し出し金利の上昇により収益が増加する可能性が高い。

一方で、米国景気の後退や国内市場の停滞、金利政策が想定ほど進まない場合など、マイナス要因も十分あり得ます。私の考えとしては、短期的には株価が乱高下する場面もあり、無理に追いかける必要はないと感じています。中期的には金利正常化や海外展開の成果が織り込まれる場面が来ると見ており、配当・株主還元策を享受する意味でも保有を検討できる局面かもしれません。長期的にはメガバンクとしての強みとリスク管理能力を信頼するかどうかが鍵となり、MUFGは比較的それらを兼ね備えた銘柄だと私は思います。 最終的に投資するかどうかは、各投資家のリスク許容度や投資期間、資金ニーズによって異なります。私自身の経験から申し上げると、銀行株は値動きが鈍いイメージがある一方で、マクロ経済要因に左右されやすく、急変動が起きやすいこともあるため、定期的に業績や市場環境をチェックしながら柔軟に対応することが大切です。 ここまでまとめてきた通り、MUFGは日本を代表する金融グループとして、安定した事業基盤と今後の海外展開による成長余地の双方を有しています。しかし、短期的には乱高下のリスクを意識し、中期から長期にかけては今後の世界経済や日本国内の金融政策の変化、そして銀行業界の再編とデジタル化に注目していくのが賢明だと考えます。私自身は、現時点で過度に強気になる必要はないとしながらも、金融政策の動向や企業業績を注意深く見つつ、押し目買いや長期保有の候補として検討したい、というスタンスを取っています。